収穫の秋。もう少し秋が深まると、大地と太陽の恵みに育まれたブドウも実りの時季を迎えて各地のワイナリーではワインづくりのシーズンが始まる。この時期ワイナリーを訪問してテイスティングを重ねるのは格別のものであり、ワイン好きの飲んべいにはこたえられない喜びだ。
しかしここに必ず立ち塞がる障害がある。当然のことながらワイナリーは葡萄畑に隣接してあることが多く、葡萄畑は農地なので交通至便とは言い難い場所にある。当然交通手段が必要になるが、これが思うに任せない。公共の交通機関は当たり前だが地元の人々向けの時間で走っているので観光客には不便だ。タクシーは高い。レンタカーは便利だが当然運転者はテイスティングが出来なくなる。ボルドーでは名だたるグランクリュのワインカーヴを巡るツアーバスが運行されているが、それはあくまで世界のボルドーでの話しである。日本のワイン生産地ではそうは行かないのが現実だ。そこで発想の転換をはかる。歩いてしまえ!それもただ歩くのではなく周囲の光景を愛でながら歩いてはどうか。食欲の秋は運動の秋でもある。
そんな思いを実現できる地域がある。山梨県甲州市勝沼地区。ご存じの方も多いと思うがワイナリーがきら星のごとく点在する地域である。ここでは市がいくつかのフットパスコースを設定していて、その中にぶどうの里コースがあり、ワイナリー巡りも可能だ。JR中央線勝沼ぶどう郷駅を起点に半日コースと一日コースが用意されている。半日コーは6キロ、1日コースでも11キロなので、少しワイナリーの寄り道をしたとしても15キロで勝沼ぶどうエリアを満喫できるのだ。サイン(道しるべ)は設置者が異なったのか様式が統一されていない部分も一部にあるが、基本的には茶色の地に白抜き文字の看板が要所要所に設置されており、市が発行する地図を携帯していればそう迷うことはないはずだ。ま、迷ったところでたかが知れているが。ただ本場英国のフットパスのように農地の中の踏みわけ道を行くわけではない。ほとんどが一般道なので、特にテイスティングの後は車道にはみ出したりせぬよう注意が肝心である。ウォークの汗を流すならやはり石和温泉か。